GCC(湾岸協力会議)
by: ムハマド ズベル
GCC(日本では、湾岸協力会議または湾岸協力理事会と称す)はサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、バーレーンの6カ国により構成される政治・経済的同盟。1981年5月、サウジアラビアのリヤドにおいて結成された。
イスラムの信仰に根差した共通の政治的・文化的アイデンテティに基づき、防衛・経済などあらゆる領域において加盟国の調整,統合,連携を実現することを目的とする。評議会の議長国は毎年持ち回りとされる。
<加盟国>
1) サウジアラビア王国(The Kingdom of Saudi Arabia)
2) アラブ首長国連邦(United Arab Emirates)
3) バーレーン王国(The Kingdom of Bahrain)
4) オマーン国(The Sultanate of Oman)
5) カタール国(Qatar)
6) クウェート国(Kuwait)
<コンセプトとその設立>
イスラム歴1401年7月21日(西暦1981年5月25日)、6ヵ国の代表が出席し、さまざまな領域で6ヵ国の協力体制を強めていくことを目的に、GCC憲章第4条に基づいて設立された。
憲章第4条は、加盟諸国および市民相互の関係の深化・強化を謳っており、イスラムという共通の信仰・信条に基づき、互いによく似たシステムを有するアラブ諸国が共通の目標の実現を目指し、各国の個性を重んじながらもアラブ諸国の協調を強め、その崇高な理想を実現することを宣言している。
<目的>
GCC憲章は以下のことを評議会の基本的目的と謳っている。
- 加盟国諸国の連帯の実現のため、あらゆる領域においてGCC加盟国間の協
調、相互関係の強化・拡大をすすめる。
1. さまざまな領域において域内相互間の関係・連携を深化・強化していく。
2. 下記の領域において共通・類似の規定を形成し、共有していく。
A: 経済・財政関連事項
B: 商業・関税及びコミュニケーション分野
C: 教育・文化分野
D: 社会・保健分野
E: 情報・観光分野
F: 立法・行政関連
4. 工業・鋼業・農業・水資源、動物資源領域においての科学・技術の振興を推進する。科学研究や合弁事業の設立、民間企業による共同事業を推進し、域内市民の利益に貢献する。
<GCCの組織構造>
1. 最高評議会(首脳会議)
GCCの最高評議会は組織の最高意思決定機関である。加盟国のトップで構成されている。議長国は、加盟国の国名のアルファベット順で持ち回りされる。通常会議は毎年招集される。
加盟国いずれかから要請があり、他の加盟国がこれに賛同する場合には特別会議が招集される。
最高評議会における会議の成立のためには,3分の2以上の国の出席が必要。投票権は各国が一票ずつ持ち、重要事項に関する決議は全会一致、手続事項に関する決議は多数決で成立する。
2.最高評議会の諮問委員会(The Consultative Commission of the Supreme Council)
GCC最高評議会の諮問委員会の委員は、加盟6カ国からそれぞれ5名ずつ選ばれ、計30人の代表により構成されている。任期は3年。
3. 閣僚理事会(外相会議)
各国の外相、または外相代理によって構成される。
議長は最高評議会(首脳会議)の直近の最高評議会の議長国が執り行う。原則3ヶ月毎に開催され、通常理事会のほか、加盟国いずれかから要請があり、他の加盟国がこれに賛同する場合において特別理事会が開かれる。3分の2以上の国の出席で会議は有効となる。
同理事会では政策の提言や取りまとめが行われ、域内の共同事業の推進や協力振興についての助言がなされる。
あらゆる分野における政策提言や,最高評議会の準備・企画を担う。会議決定事項は助言という形で最高評議会に提出される。理事会は最高評議会の準備・最高評議会の議題の準備も担当する。会議成立の要件は、最高評議会と同様。
4. GCC事務局
GCC事務局は域内の協力、調整、計画などに関する研究の諸準備を行い、GCCによる達成度についての定期レポートを作成する。また、GCC決定事項の進捗状況や最高評議会、閣僚理事会の求めに応じた各種報告書の作成、各機関の会合のアレンジなど、広範な業務を行う。
さらに事務局は会合の議題の確定・決議起草を行う。この事務局はリヤドに置かれ,GCC各国より派遣された事務局員によって構成される。
<GCC事務局の構成>
A: 事務総長
最高評議会が選出する。3年を任期とし、再選可能。
B: 事務総長補佐(10名):
GCCの権限の元に、政治、軍事、安全保障、人道、環境、法律、メディア文化などの分野に関する事務的事項を取り扱う。
事務総長が指名、閣僚理事会が任命する。3年を任期とし、再選が許される。
EUへは同事務総長補佐の中からGCC代表団として代表が出席、国連へのGCC代表も事務総長補佐の中から選ばれる。
C: 専門機能部門長および所属職員
すべての職員は事務総長により任命される。事務局の事務的機能は政治、経済、軍事、安全保障、人道、環境関連領域などの専門・補助分野をカバーする。
専門分野を担当する事務局やダンピング防止担当事務局、通信技術事務局(バーレーン)、諮問委員会(オマーン)などが設置されている。
<GCC領域と加盟国 >
アラビア半島はアジア大陸南西に位置し、その300万平方キロの領域のうち、アラビア半島南西部はアラビア語でRub'al-Khali, the Empty Quarter(ルバアルハリ砂漠)と呼ばれる砂漠地帯が占める。
アラビア半島にはサウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン、イエメンの7カ国がある。そのうちイエメンを除く6カ国がGCCを構成する。
サウジアラビア王国
المملكةالعربيةالسعودية
Kingdom of Saudi Arabia
アラビア半島の5分の4、2,240,000平方キロメートルの領域を国土とする半島最大の国。国土の約半分は砂漠地帯が占める。国土の東側は紅海、アカバ湾に接し、南はイエメン、オマーンと国境を接する。西側はアラビア湾、アラブ首長国連邦、カタール、北側をヨルダン、イラク、クウェートと国境を隔てる。国土の東側には世界屈指の油田を持つ。
首都リヤドは国土東側に位置し、第二の都市ジェッダには国内の中心的役割を担う港がある。メッカへの巡礼ハッジ、ウムラの入り口都市としても知られる。
アール・サウード家から国王を擁立する君主制。アール・サウード家の歴史は18世紀中頃にさかのぼり、中央アラビアの都市ディルイーヤを治めたムハンマド・ビン・サウードから始まる。1932年、アブドゥル・アズィーズ・アル・サウード王により近代国家としてのサウジアラビアが建国された。成文憲法はファハド・アブドゥル・アズィーズ・アル・サウード王統治(1982-2005)下に成立した。2005年から2015年1月までアブドゥル・ビン・アブドゥル・アズィーズ・アル・サウード王が統治。以降はサルマン・ビン・アブドゥル・アズィーズ・アル・サウード王が統治を継承している。
同国最大の産業は石油取引であり、OPEC内で最大の石油保有国であり、産出量はOPEC全体の約3分の1。
1日当たりの石油産出可能量は1,000万バレル。経済の多角化を推進、石油化学、肥料、鉄鋼業などの重工業に力を入れている。伝統的に漁業・農業が主要収入源であったが、現在も盛んで、デーツは世界屈指の生産量を誇り、また漁業も成長を続けている。
アラブ首長国連邦
دولةالإماراتالعربيةالمتحده
The United Arab Emirates
首長国またはUAEと呼称されるアラブ首長国連邦は、アラビア半島南東に位置し、東をオマーン、南をサウジアラビアと国境を接し、海を挟んでカタール、イラン、パキスタンと隣接する。
1971年12月に建国され、7つの首長国が連邦を構成する。各首長国は、世襲制により統治されている。各首長連合の意思最高決定機関である連邦最高評議会はこれら各国首長により構成され、この中からUAEの大統領が選出される。連邦を構成する7つの首長国は、アブダビ、ドバイ、シャールジャ、アジュマーン、ウンム・アル=カイワイン、フジャイラ、ラアス・アル=ハイマである。首都はアブダビにおかれ、ドバイとともに商業・文化の中心となっている。国教はイスラム教、公用語はアラビア語。
1962年、アブダビは連邦で初めて石油輸出を行った。アブダビの王であり、UAE初代大統領であるシーク・ザイードは、石油輸出による歳入を教育、保健、インフラ整備に充て連邦を整備。今日、連邦の石油埋蔵量は世界第7位、天然ガス埋蔵は世界17位。これらの天然資源の輸出により貿易収支は黒字化、GDPでは世界19位に成長している。ドバイは、中東とアフリカをつなぐ玄関都市として急激に躍進を遂げたことで、UAEはアラビア半島の発展のシンボルとなっている。
バーレーン王国
مملكة البحرين
Kingdom of Bahrain
33の群島により形成される。紀元前6000年頃、アラビア半島から分離、現在の群島の地形が形成されたとみられている。
アラビア湾に位置し、サウジアラビア東岸から24キロ、カタールから28キロに位置する。国土面積は678平方キロ。首都のマナマは同国の北東に位置する島である。主要港はミナサルマーン、主要な石油精製施設と商業の中心が同島におかれている。国内の島々は相互の橋によってつながれ、またサウジアラビアとも繋がっている。
アル・ムハッラクは国内第二の都市で、国際空港は同島に置かれている。
君主制独立国家であり、2002年に新憲法を発効、自らを王国と宣言した。
アル・カリーファー家により統治されており、同家は18世紀中頃 島に上陸。2001年、同家が提案した政治改革は、国民審査によりほぼ全員の賛成を受け、同提案は2004年に発効し、これにより同国は議会下院及び独立司法機関を備えた君主国家となった。
1932年には商業ベースに見合う石油が発見される。湾岸諸国の中で最初に石油が発見された国である。また石油取引による歳入を教育、ヘルスケアの質的向上へと投入するという最初の試みを行ったのも同国である。湾岸諸国の基準においてはバーレーンの石油埋蔵はかなり小さいと言える。石油歳入への依存度を減少させるため、同国政府は経済の多角化を推進、IT産業をはじめとした企業の誘致にも注力している。
オマーン国
سلطنة عُمان
Sultanate of Oman
アラビア半島の南東部に位置し、212,457平方キロメートルの広大な国土を有する。南西部をイエメンと接し、西側はサウジアラビア、北西部をUAE、北側をオマーン湾、東側-南側はアラビア海に面する。
オマーン湾とアラビア湾とを結ぶホルムズ海峡を隔て、UAEと国境を接し、オマーン本土とは分断された国土がある。
アラビア湾の入り口に位置する地理的好条件から、歴史的に戦略的場所と位置づけられてきた。
一時はその領土は西アフリカ沿いにまで及び、アラビア湾の支配をめぐる争いでポルトガルや英国と戦いを交えた歴史を有する。首都は1741年よりマスカット。
1970年以降、スルターン・カボース・ビン・サード・アル・サード国王が統治する。君主国で、統治するスルターン・カボース家はマスカットからイランが駆逐された後の1744年、統治を開始した。スルターンは首相、防衛省、外務関係、財務大臣のポストも兼務する。
諮問機関として国家委員会が設置されている。
同国の主要天然資源は石油および天然ガス。確認されている石油埋蔵量は40億バレルと限られており、政府は天然ガス輸出国への転向を目指している。
また、製造業も主要産業として重要性を増してきており、テキスタイル、セメントブロック、家具、肥料、繊維ガラス製品などが主要製品となっている。
カタール国
دولة قطر
State of Qatar
アラビア半島北部に位置し、アラビア湾に約180キロにわたり突き出た形状の国土を持つ。南部はサウジアラビアと国境を接する。国土面積は11,437平方キロメートル。首都は西海岸に位置するドーハ。
伝統的君主国家で、アル・サーニー家が代々統治する。同家は18世紀初頭に現在のカタールへ上陸、当初は北部に定住したが、のちに南下、19世紀中頃、ドーハへ移住したとされる。
1999年に最初の選挙が行われ、29の市民委員会が設立された。女性投票権、参政権が与えられている。
同国の輸出の約80%は原油、LNGが占めているが、石油産出国としては世界の1%を占めるに留まる。
銀行関連産業も同国の主要産業となっている。
クウェート国
دولة الكويت
State of Kuwait
アラビア半島の北東部に位置し、北部をイラク、南部をサウジアラビアと国境を接し、東部はアラビア湾に面する。17,818平方キロメートルと国土面積は小さく、9つの島を有する。首都であり経済の中心であるクウェート市には、港がおかれ、石油輸出、石油製品製造にとって重要な拠点となっている。近隣都市のアル・ジャハラは農業の中心であり、主に青果を生産している。地理的特徴としては、48キロにわたるクウェート湾がある。
立憲君主制で、アル・サバーハ家による統治が1756年より続いている。憲法は1962年に承認され、アル・サバーハ家による発効、承認を受けた。
原油および原油精製製品が同国輸出製品の大部分を占める。
原油埋蔵量では世界の約10%を保有するといわれ、これは世界第3位の埋蔵量。
他には、脱塩化処理関連、食品加工、建材製造(プラスチック、セメント、金属製パイプ類)が主要産業としてあげられる。